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06 - Column

働き方コラム

2026.07.23

《社長レポート》数馬酒造の採用活動において「未経験者」を重視する理由

数馬酒造の酒造りを講演会やお客様にご紹介させていただく際に、多くの方があることに驚かれます。
それは「造り手の年齢が若く、かつ未経験からスタートした社員が中心である」ということです。

実際に、2026年7月現在の製造部社員は20代から30代が中心です。醸造チームにおいては、5人中3人が新卒入社、中途採用で入社された方も酒造り未経験でした。

「職人の世界」と言われる日本酒業界において、私たちはなぜ「未経験者」を歓迎して採用活動を行っているのか。今コラムでは、その背景にある私たちの考えと、未経験でも活躍できる理由についてお話しします。

 

能力や経験よりも大切なこと。素直な心で共感ができるか

多くの求人では即戦力となる能力(スキル)や経験を求められることが一般的かもしれません。しかし、数馬酒造の採用基準は少し異なります。
15年間酒蔵を経営してきた私は、価値観(ベクトル)×コンディション×能力(スキル)の掛け合わせをパフォーマンスの要素とした時に、持続可能な酒造りを実現するためには、能力(スキル)以上に、価値観とコンディションこそが大切ではないかと仮説を立てています。いくら高い能力や豊富な経験があったとしても、会社の方針に共感できていなければ、どこかで齟齬が生まれ、品質の良い日本酒造りには繋がりません。

だからこそ私たちは、能力重視の採用ではなく、数馬酒造の価値観や方針への共感度を最優先にしています。
良いパフォーマンスのためのコンディションについては、言うまでもありません。10年をかけて行ってきた酒蔵の設備投資を含め、働き方の大幅な見直しや、コミュニケーション強化によって抜本的な改革を積み重ね、健やかな心身で取り組める醸造環境を実現させています。
《社長レポート》数馬酒造の採用活動において「未経験者」を重視する理由
 

受け継がれてきた伝統を土台に、確かな技術習得の環境づくり

「未経験でも本当に大丈夫?」と不安に感じる方もいらっしゃるかと思います。未知の世界に飛び込むことは勇気のいることです。数馬酒造では未経験の方でも安心して働ける環境づくりにも取り組んでいます。

酒造りといえば、かつては杜氏が責任者を務め、経験や勘に優れた個人の能力に頼る部分が大きく、「一人前」と呼ばれるまでに長い年月が必要でした。また一人前になったとしても、その方が辞めてしまっては、会社には何も残りません。属人的な技術に依存する体制からの脱却は必然でした。先人たちが脈々と紡いできた技術や歴史、伝統を大切に敬いながらも、現代社会に調和し、持続可能なものづくりを目指す必要がありました。

取り組んだのは、醸造工程の数値化、マニュアル化です。必要であれば設備投資を行い、小さなところから改善を積み重ねることで、誰もが酒造りに従事できる「技術習得のプロセス」を確立させました。

これは酒造りを軽視したり、単に均一な味わいの酒を目指すものではありません。造り手の感性や創造性を最大限に引き出すための一歩であり、品質の土台作りです。経験による感覚だけでなく、データやマニュアルから基礎を学び、酒造りの現場で実践します。
《社長レポート》数馬酒造の採用活動において「未経験者」を重視する理由
一方で、醸造スケジュールについても見直しています。こちらもよく驚かれるのですが、数馬酒造では土日休みの完全週休2日制で酒造りを行っています。そのため月曜から金曜までの作業スケジュールがほぼ決まっていることで、酒造りの流れや作業手順が新しいメンバーであっても覚えやすくなっています。

さらには、作業の振り返りや改善案を出し合うミーティングを設け、スキルチェックシートで知識の共有を進め、着実な技術習得と自身のスキルの見える化に繋がります。

 

入社1年目から「自分の造りたいお酒」に挑戦。数馬酒造の責任醸造制度

成長を後押しする独自制度として、「責任醸造制度」があります。 これは各醸造社員が一人1タンクの責任者となり、コンセプトから酒質設計、仕込み計画までを担う制度です。簡単に言うと「1人1本、好きなお酒を仕込む」ことができるというわけです。

この制度により、未経験から入社した社員も「自分の酒」に責任を持ち、試行錯誤しながら酒造りの楽しさと難しさを肌で学ぶことができます。実際にこの制度から生まれたお酒が商品化され、お客様に喜ばれている事例も数多くあり、頂いたお声がさらなる励みになります。昨年入社した社員も入社時からいくつも構想を練っていたようです。

過去の経験や固定観念がない「未経験者」だからこそ、新しい手法やデータを素直に吸収し、新鮮な感性を酒造りに活かしてくれるケースが少なくありません。これまでの伝統に敬意を払いながら、常に進化を目指すからこそ、造り手のポテンシャルを最大限に引き出せると考えています。

 

酒造業界の未来をつくるために

数馬酒造が未経験者にフォーカスして採用活動を行うのには、もう一つ大きな理由があります。それは「酒造業界に従事する人を増やしたい」という想いです。全国的に酒蔵や蔵人の数が減少している中、業界内で経験者の奪い合いをしていても未来は拓けません。全くの異業種からでもすそ野の広い採用活動を行い、日本酒造りに情熱を持った方を一人でも多く迎え入れ、一緒に成長していくこと。それが業界の未来のために、私たちができることだと考えています。

経験がないことは、ハンデではありません。
「人が全て」。先代から受け継いだこの言葉が、今も私の軸となっています。

私たちの理念に共感し、ともに能登を醸し、ともに挑戦してくれる人との出会いを、心より楽しみにしています。
 

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