どのような気持ちで過ごしたらよいものかと考えあぐねながら迎えた2025年が、気がつけばあとわずかとなっています。この一年もたくさんの出来事があったはずですが、ひとつひとつを鮮明な記憶として蘇らせることが難しく、その目まぐるしさを思います。当たり前の生活や、当たり前に酒造りをすること、そのすべての尊さを、何気ない瞬間に感じます。あと少し残る今年のうちに、秋からのことを記します。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
●清酒製造蔵の大清掃
酒造りのお休み期間中に、製造部に加えて営業部のメンバーも揃って、清酒製造蔵の大清掃を行いました。壁という壁、天井、窓、床、タンクをくまなく拭き上げ、消毒を行いました。手が届かないところや、普段に見落としているものは多々あるもので、そんな心に向き合うように手を動かしました。
「米を磨き、蔵を洗う。心を磨き、酒を醸す。」
蔵にかかる先代からの言葉が胸に響きます。

昨年から定期的に外部指導を受けながら、清酒製造蔵や事務所の整理整頓活動を行っています。蔵の解体など、目前に迫る整理整頓の必要性もさることながら、これを良いきっかけとして組織力を強化する目的があります。
前述の清酒製造蔵の清掃時には、直営店の臨時休業も設けながら数日間を費やしました。また、社内に衛生チームを発足させて専門家の指導のもと品質管理(QC)活動にも取り組んでいます。
些細なことこそ蔵の姿勢となり、日本酒の味わいに繋がっていきます。柔らかで清々しい能登の日本酒を届けていきたいと思います。
●解体した蔵の再建
10月1日、木造蔵2棟の解体跡地にて地鎮祭を執り行ないました。施工に携わる関係各社と社員約30名が参列し、工事の安全を祈願しました。「皆様と次の新しい歴史を作りたい」と弊社社⾧の言葉があり、社員一同、感謝を胸に前進していく決意を一層強くしました。

能登半島地震で損傷した木造蔵4棟の建て替え工事は、大きく二期に分けて進行しています。
第一期工事では出荷場と精米所として使用している蔵を残したまま、貯蔵蔵としていた2棟を先んじて解体しました。こちらの跡地に新しく瓶詰め場と貯蔵倉庫として、鉄筋の平屋を建設中です。工期は2026年6月に一段落し、続いて第二期工事として出荷場の建て替え、精米所の木造蔵の解体が行われます。すべてが順調に進んで2027年の夏に工事が完了する見込みです。
現在、ひと続きになっていた酒蔵内部は、分断され、解体跡地には深く杭が打たれています。残された建物の限られたスペースに頭をひねる日々ですが、酒造りを止めることがないように再生の道筋を見定めながらより良く立ち上がっていけたらと思います。

●懸念していた米不足も解消
お米の収穫時期を迎えようとする頃、能登の契約農家さんから猛暑と水不足によって収穫量の減少がありそうだとの連絡がありました。お米の価格高騰に加えて、お米の収穫量にも心配が及びます。酒造りに入る直前まで醸造計画を書き直す日々が続きました。
収穫がすべて完了すると、ほぼ減量なく酒造りが進行できる見通しとなり、胸をなで下ろしました。全量能登産米の酒造りは、能登の農家さんらと歩む酒造りです。だからこそ酒を造る意味や意義を心から感じることができます。
●2025年度の酒造り
10月より今期の酒造りが始まりました。いつもと変わりないように、いつも以上になるように。同じようなことの繰り返しの中に思考を重ねて、皆様に喜んでいただける酒造りを続けます。
11月上旬に今年初めての新酒が搾り上がると、いつものように神棚に供え、柏手を打ち、感謝を胸に刻みました。

今後も続々と新酒が醸し上がります。今年は工事の関係で置き場所や冷蔵設備が限られているため、醸し上がった新酒をすぐに出荷するような段としており、なかなかの緊張感がありますが、明るい声が飛び交う度に頼もしい仲間たちに安堵と感謝を抱いています。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
能登半島地震から2年目となる2025年は、なにをとっても古い木造蔵の解体が最大の出来事でした。約150年前の創業時の面影が残る建物を、物理的に失うのは一瞬でした。今では夢のように思える賑わいを見せていた港町にあって、皆様に長年愛されながら支えられてきたこと、先人達が積み重ねてきた深い想いや息づかいが蔵の道具ひとつにも感じられ、私たちは次世代に何を繋ぐべきか、次の150年に向けて真の決意ができた一年でもありました。
震災から時間だけが過ぎるばかりに思える日々では、皆様からのお声に本当に支えられました。頂いたお手紙、メール、コメント、全て有り難く受け取っております。その一部となりますが、こちらに大切に掲載させていただきます。
皆様から頂いた励ましへの感謝と感動が、私たちの原動力になっています。改めて心より感謝申し上げます。
これから復興に向かう能登を引き続き応援いただけますと幸いです。
皆様にとりまして迎える新年が素晴らしい一年となりますことをお祈りしています。