醸しコラム

Column

今期の酒造りでの学び

2020.04.15


こんにちは。数馬酒造・蔵人の又木です。
長いようであっという間の酒造りが終わり、今期も無事に甑(こしき)倒しを迎えることが出来ました!
今回のコラムでは今期の酒造りで学んだことなどを綴りたいと思います。

今年度、醸造課では正社員5名と季節雇用者1名の計6人が在籍しています。若手が多く、平均年齢は30代前半。多くがUIターン者であることも特徴です。

入社した当初は泊まり込みでの労働体制が基本で、朝は早くから仕込みの準備をし、夜は遅くまで麹の様子を見ていましたが、今では設備投資により少人数ながらも効率よく酒造りを行うことが可能となりました。
例えば、洗米機や上槽場の冷蔵庫化、最新型の放冷機や全自動分析器、温度管理アプリの導入などです。これらの設備投資によって泊まり込み作業はなくなり、今では毎日通勤しながら酒造りを行っています。

私は主に原料処理を担当しています。精米作業や精米後の洗米、蒸米の仕込み作業などを行います。
数馬酒造では能登地域で唯一、精米機を保有しています。契約農家さんから受け入れた酒米を自社で精米し、お米の状態を自分たちの目で確かめることができますし、お米のトレーサビリティも可能になります。

精米機は兵庫県の会社さんの竪型精米機を20年以上も前から使用しています。
精米仕事は1袋30kgのお米を、多くて1200kg以上、少なくても600kgを1回量として張り込みを行わなければなりません。精米後の白米や米ぬかを取り出したりなど、特に体力と力を使う作業です。
また、精米歩合によって精米時間は変わり、低精米歩合だと10時間ほどで終わる作業も、大吟醸クラスのような高精米になると40時間もかかります。

精米作業をするなかで特に印象に残っているのは、「お米を作っている農家さんの気持ちになってみよう!」という社長の言葉でした。精米仕事は酒造りのなかでも最初の工程で、それによって後々の味わいも変わってくる、とても重要な作業の1つです。

数馬酒造では契約農家さんと連携し、酒米を確保していますが、そうした酒米の生産現場を知ることで見えてくるものがあります。
例えば、実際に農家さんの田んぼを見に行ったことがありますが、苗床を作らずに、種を直接田んぼに植えて稲をつくるなど自分も初めて見る画期的な取り組みをされていたり、効率よく作業ができるよう労働環境を整備されていたり、様々な認証制度を取得してブランド力を高めていらっしゃるなど、話には聞いていても実際の現場を見ることで精米をする時にも「これはあそこの田んぼでああやって作られたお米なんだ」と実感できるようになりました。
さらに、農家さんからは「能登のお米でおいしいお酒をつくってほしい」という気持ちを受け取ることができました。

そうしたなかで、品質維持のため今年度は酒米の割れを防ぐために精米後はビニールで米袋を覆い、外部の湿度などの影響を小さくしました。その結果ビニールをしない状態よりも水分率の増加を抑えることができ、お米の胴割れを小さくすることもできました。

近年では、日本酒業界のみならず地元志向の取り組みが様々なところで行われています。日本酒でも『テロワール』という言葉で地元に根差した取り組みが活発です。
能登で育てられたお米を、能登の酒蔵でお酒に加工し、お客様の元へお届けする。
個人的に、清酒は酒蔵の歴史やお酒の製造方法など、その蔵の様々な情報も合わせて飲まれることが多く、情報の伝達力と発信力の高い商品だと思います。その際に、お酒造りの現場のことはもちろん、お米が生産される過程のことや農家さんの取り組みなども一緒に発信することで、数馬酒造のお酒をはじめ、お米が育てられる水田や地域全体の様子をお届けできればと思います。

ただ漠然とお酒を通して地元に貢献したいという私に、醸造責任者から「お酒を造ることが、地域に貢献する一番の近道だよ」と言われたことがあります。いかに、お酒とこの土地や歴史、人々を結びつけてゆくのか、それをどう飲み手に共感してもらうかを考えていかなければと思います。

またこれから田植えの季節が始まります。
機会をつくって、農家さんのところへ伺えたらと思っています。

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