醸しコラム

Column

能登を醸す|数馬酒造 復興レポート5 4/2~5/2

2024.05.07

この度の地震に際し、たくさんの温かいお心寄せを頂きまして心より感謝申し上げます。
同じく被災なさった皆様にはお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧とご安全をお祈り申し上げます。

おかげさまで数馬酒造は復興への道を確かに歩むことができております。
その様子をレポートとして綴ってまいりますので、ご覧いただけましたら幸いです。

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季節は新緑へと移ろいました。本来であれば、昨年継承したばかりの梅畑に出向いていないといけない時期ですが、これまで酒造りの再開に専心していて、こちらは着手できていないままです。
梅の木の管理を見守ってくださる珠洲市の農家さんにお電話をすると、4月の末というのに、まだ水道が来ていないと言います。珠洲市はやっと市の45%ほどが通水したと、この日の朝刊にありました。いつも元気な方なのに「疲れてしまったわ」と力なく笑った一言が、胸の奥をずしりと重くします。
「梅の実がなる木も分かっているんだから、今年は出来る範囲のことを出来る範囲でやりましょう」と、お互いを労り、梅畑で元気にお会いすることを約束しました。電話を切った後も、疲れたという言葉が耳に残ります。

実は、今頃になって、あれもこれもこれからなのだという事実に直面しています。
とにかく酒造りの再開をと、他のことをまるで差し置いて邁進してきたので、木造建屋の解体も、修繕も、これからなのです。大きく亀裂が入り、地盤沈下で湾曲した出荷場にも、慣れの方が早く来てしまいました。醤油製造のこと、リキュール製造のこと、これからやっと考え始められる心境です。同時に、やるべきことの膨大さに唖然としつつ、これもまた次の段階に進めた証と言い聞かせています。

能登にご来訪されるお客様は、あまりに復旧の進んでいない街並みや我々の様子を見て、驚かれます。力になれることがあったらまた来ますから!とずいぶん強めにおっしゃってくださって、ようやく、ああそうか。と気がつくくらい、呆然と過ごしていたのかもしれません。

社員の中には自宅が長く断水の者が何名かおりましたが、4月末についに通水したとの知らせが続きました。またひとつずつ、胸のつかえが取れていきます。

4月から再開した酒造りは、想定外のこともあろうという心づもりを持ちながら、無理のないスケジュールの中で奮闘しています。大きな蒸し器のある洗い場の隣に、冷蔵貯蔵室をこしらえ、温度管理に注意を払いながら仕込んでいます。これまでに経験のない暖かな季節での酒造りは一筋縄ではいかないものと覚悟しつつ、これも新しい挑戦と、前向きな気持ちで立ち向かうことが出来ています。醸造責任者の栗間にもろみの様子を訪ねると、心配に反して普段通りの良い経過をしてくれていると言います。それを聞いて、暗闇に光がさすような思いがしました。
酒造りの再開 初蒸し
酒造りの再開 初蒸し
委託醸造についても、進行しています。
石川県内外の酒蔵様に能登産のお米を用いていただき、「能登を醸す」委託醸造です。

4月9日、石川県白山市の車多酒造様で石川県独自の酒米品種「百万石乃白」の特別純米のもろみを試飲させていただきました。岡田杜氏が見守ってくださっているもろみは、透明感のあるきれいな味わいで、心洗われる思いがしました。重厚感と洗練された空気が漂う静かな酒蔵の中で、大切に醸されているもろみは神々しくありました。こちらは4月末に上槽を迎え、5月末からの販売に向けた調整を行っております。

長野県の岡崎酒造様でも委託醸造の酒造りが進行しています。
岡崎酒造代表取締役の岡崎謙一様とは、弊社社長と酒類総合研究所での講習にて隣同士の席だった頃からのご縁です。今回の能登半島地震を受けて、たくさんのご心配をお寄せいただき、お力をお貸しいただくことになりました。
岡崎様は数年前に弊社を訪問してくださり、その際に朝礼にも参加してくださいました。皆、その時のことが心に残っており、今回お胸をお借りできることを大変嬉しく思っておりました。5月1日には弊社社長が岡崎酒造様を訪れ、ご挨拶をさせていただきました。岡崎酒造の皆様に囲まれた和やかな笑顔の写真が送られてくると、心が温かくなりました。こちらは5月の上旬に上槽予定です。
岡崎酒造の皆様と

また岩手県の赤武酒造様では4月末から仕込み作業が始まりました。Makuake様での「能登の酒を止めるな!被災日本酒蔵共同醸造支援プロジェクト」を通してご支援のお申し入れをいただき、今回の委託醸造のご縁となりました。
以前から赤武酒造様のことはよくお聞きしておりました。というのも、赤武酒造様に勤めていた社員が、現在弊社の醸造社員として酒造りに携わっているからです。彼女もまた赤武酒造様で東日本大震災後の対応に奮闘していた一人でした。結婚を機に能登へ移住し、今回の能登半島地震にて被災しました。赤武酒造様との委託醸造の話を聞いた彼女は、感極まって涙が溢れていました。昔の仲間たちと一緒に酒造りができることを心から喜んでいる様子に、私たちも目頭が熱くなります。

出会いの奇跡や温かな繋がりに助けられ、感謝する日々です。

委託醸造につきましては、ホームページお知らせ「委託醸造いただいた日本酒の販売について」にて詳報しております。

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温かいご支援、励ましに心から御礼申し上げます。
皆様もどうかご安全に平穏でありますように。
これからも日本酒をお楽しみいただき、応援いただけますと大変有り難く存じます。

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