醸しコラム

Column

持続可能な日本酒造りへの取り組み
酒米の調達において能登産100%達成

2021.05.01

能登産100%の酒米 | 石川県奥能登の日本酒酒蔵 数馬酒造

数馬酒造では、2020年の酒造りより、日本酒造りに使用する酒米の調達において能登産100%を達成いたしました。
これにより弊社の酒造りにおける原材料の米・水がすべて能登産です。唯一県外産の酒米を使用していた「竹葉(ちくは)純米吟醸」の2021年の新酒出荷を機に、提供する全ての日本酒が能登産の酒米となります。

弊社は2014年より、能登の耕作放棄地の開墾や地域資源の活用を通じて、持続可能なものづくりに取り組んでいます。

 

数馬酒造のSDGsへの取り組みについて

私たちの生業の礎は、能登の自然。
この美しい能登の里山里海を守り、次世代につなぐ。
「醸しのものづくり」で能登の魅力を高めることが私たちの使命です。

この使命を果たす手段の一つとして、2011年より能登産の原材料調達100%に取り組み始めます。
当時の経営理念に「心豊かな能登(まち)創り」というフレーズがありました。「酒造りを通じて、まちを良くしていく」ことを考えた際、過疎や地域産業の衰退に対して「能登の未来を良くしていく」行動は必然でした。

世界農業遺産に認定される美しい能登の田園風景

酒造りは自然の恵みによって営まれる産業です。
能登の地で生きる酒蔵として能登の地を豊かで持続可能な環境にしていくことは命題でもありました。
2020年には経営理念を「能登を醸す」の一言に昇華させています。地域資源の価値を最大化するものづくりによって、能登の魅力を高め続ける企業である決意を表しています。

 

取り組みへの経緯

100%能登産の米に転換するにあたり、業界・契機・リスクヘッジの3つの背景があります。

1)業界の主流

当時、県内酒蔵の主流は「酒造好適米」と呼ばれる酒造りに適した酒米を県外から仕入れて酒を仕込むことでした。兵庫県産の山田錦などは良い酒が造れると大変有名な酒米のひとつと言われ、現在も多くの酒蔵が兵庫県産の山田錦を使用しています。酒米調達の多くは酒造組合を通じて行われ、精米を済ませた酒米が納品されます。

このような業界の背景から、当時の能登で酒米を栽培する農家は少なく、能登の取引先は30年ほど前から先代社長が契約栽培を依頼していた地元農家だけでした。

また弊社は、能登で唯一100%自社精米を行う酒蔵であるため、地域の農家からの直接仕入れがしやすく、このことも原材料調達の全量能登産を実現する過程に活きていきます。

能登の酒蔵で唯一の自社精米所 | 石川県奥能登の日本酒酒蔵 数馬酒造

2)契機

能登産の酒米へと大きく割合を増やす活路となった最大の契機は、能登にUターンして農業を起業した若き青年との出会いでした。奇しくも、現社長の高校時代の同窓生であり、二人は能登の未来を語り合う中で、未経験だった酒米の契約栽培を決意します。

同時に地域課題であった過疎化から起こる「耕作放棄地の開墾」に着手。
このような取り組みの中で、数馬酒造は「酒造りを通じて地域課題を解決できる」という強い手応えと確信を持つことができました。

現在水田に再生した耕作放棄地は東京ドーム5個分。農地は100軒以上に及ぶ地主からお借りしている土地です。
この事実が地元からの温かい応援と期待を肌で感じさせます。

以降、続々と能登の各地区の農家との出会いに恵まれ、5地区7軒の契約農家と連携しています。
数馬酒造の日本酒が飲まれるほど地域の水田が美しく保たれる循環が生まれました。

弊社社長(左)と契約農家のめうらら様(右)

3)リスクヘッジ

一方で、日本酒の原材料である米を全て能登産へと傾倒させることへの懸念もありました。
原材料の調達地域を集約させることは災害や気候変動におけるリスクを拡大する恐れがあるからです。

しかしながら、数馬酒造では時を同じくしてかつての生業であった醤油蔵と、またリキュール蔵を、それぞれ港付近の製造場から高台へと移転させ、醸造拠点を分散することができました。
加えて、醤油事業やリキュール事業を強化することで、原材料調達における米の比重を小さくし、一つの作物に頼らない経営上のリスク軽減を図りました。

こうした経緯によって日本酒造りにおける米の全量能登産に踏み切ることとなりました。

 

全量能登産への難しさと意義

100%地元産のお米を使うことは農家や地域とのパートナーシップと継続性の確保について、酒蔵が少なくない責任を負うことを意味します。地域へ与える影響を自覚し、その大きさを引き受ける必要があるからです。

しかしながらそれ以上に大きな意義がありました。
ひとつは、能登産米を使った「地酒」がもたらす地域活性への後押し。それは経済的・環境的な側面のみならず、地域の人々の「誇り」にも触れる部分への価値でした。
もうひとつは、日本酒造りにおけるテロワールの実現と酒造りそのものへの「意義」の高まりです。

さらに、周辺環境への好影響も感じています。
原材料を輸送する際にかかるエネルギー「フードマイレージ」の削減。また、酒米の生産量増加に伴う、生産者様の雇用拡大や研究開発による農業技術の向上です。

こうした経験を通じて原材料の能登産への想いはさらに強くなっています。
2021年2月に発売した「竹葉 生酛純米 奥能登」は、通常日本酒の原材料に記載されない日本酒の「酵母」にまで能登産にこだわった商品です。能登のテロワールをより一層体現する数馬酒造の“能登を醸す”日本酒が始動しています。

能登産の海藻酵母で醸す「竹葉 生酛純米 奥能登」

 

その他の取り組み

契約農家のうち、前述の「株式会社ゆめうらら」様では、より地域特性を考慮した酒米づくりに力を入れています。
地元JA様と連携し、気象データや土壌データを分析。酒米の品種や、水田によって最適な肥料を試験開発しています。2020年度の酒造りより、この酒米別専用肥料を使用したお米での酒造りが始まりました。水田環境や酒米に影響を与える農薬はすべて不検出です。安心安全を担保しながら、品質や収量の向上を目指します。

これらの取り組みを通じて、数馬酒造は地域資源の価値を最大化するものづくりに真摯に向き合い、能登の魅力を高めようと共鳴し合う生産者とともに、皆様へ「風土を感じるおいしさ」をお届けしてまいります。

「環境特A地区」の認定を受けるゆめうらら様の水田

 

この記事で紹介した商品


 

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