醸しコラム

Column

【能登の酒蔵が挑む】食の時を豊かにする原点回帰の醤油

2021.11.15

食の時を豊かにする原点回帰の醤油
創業150年の節目であった2019年、数馬酒造がある能登町内の山あいに位置する廃園となった保育所を活用し、醤油蔵を移転させました。ここで仕込んだ「竹葉 酒蔵が仕込んだ能登の里海醤油」は、能登の耕作放棄地で栽培した大豆と小麦、 能登の海洋深層水を使用した、能登の風土を伝える醤油です。

 

目次

 

「竹葉 酒蔵が仕込んだ能登の里海醤油」3つの特徴

  • 能登の原材料にこだわり、能登の風土の味わいを伝える醤油
  • 日本酒造りで培われた技術を用いた芳しい香りと味わい
  • 耕作放棄地や廃園となった保育所の活用を通した未来思考のものづくり
  • 竹葉 酒蔵が仕込んだ能登の里海醤油

 

酒蔵が手掛ける醤油 – その背景

酒造りは自然の恵みによって営まれる産業ゆえ、能登の地で生きる酒蔵として「醸しのものづくり」で能登の魅力を高めることは私たちの使命でありました。この使命を果たすため、能登産の原材料にこだわり、酒造りで使用する原料米を2011年から10年かけて能登産100%に切り替えました。そうした姿勢は能登の地域を越えて、世界からも歓迎され、能登の風土が感じられる味わいを伝えるかけがえのなさを一層強く感じるようになりました。
酒造り
数馬酒造らしさは「挑戦し続けるものづくり」にも投影されています。既成概念にとらわれない働き方を取り入れ、醸造責任者を筆頭に醸造社員も平均年齢32歳と若く、柔軟性と活気に溢れています。自由な発想を尊重した責任醸造では、海藻酵母などの新しい素材の採用や、生酛造りや水酛造りといった温故知新の造りに取り組むなど、挑戦を推進してきました。

こうした二つの背景が、能登産の原料にこだわった原点回帰の醤油を醸すことに繋がっていきます。

 

能登最古の醤油事業 – 醤油を造り続ける意義

能登最古の醤油数馬酒造のルーツは醤油にあります。能登最古の醤油蔵として、文献が残る明治二年の日本酒事業開始よりも前から醤油造りが行われていたといいます。 以降、酒造りを主たる事業としながらも醤油造りを脈々と続けていました。その150年の長い歴史の中で、日本酒事業に専心しようとする動きがなかったわけではありません。
三代目蔵元・嘉平が醤油事業からの撤退を考えた際、二代目・伊平から「日本酒と醤油は日本の食卓に欠かせないもの。いつの時代になっても必要であり、造り続ける意味がある」と諭されたといいます。
旧醤油蔵
1960年代に入ると 全国醤油工業協同組合連合会が発足し、日本における醤油造りは大きな転換期を迎えます。安定的な品質を、安定的に供給するため、「組合醤油」が始まりました。各地域の醤油組合からベースとなる組合醤油を買い付け、自社でブレンドする製法が全国各地の主流となったのです。石川県においても石川大野醤油醸造協業組合が発足し、1969年には組合工場が設立しています。数馬酒造も例外ではなく、以降同様の製法で醤油製造を続けてきました。

参考文献:しょうゆ情報センターHP https://www.soysauce.or.jp/
石川大野醤油醸造協業組合HP http://www.oonomurasaki.jp/

五代目の現蔵元・嘉一郎に代を受け継ぎ、酒造りにおいては能登の風土を伝える造りに一心になる一方で、醤油においてはそれを実現させることに二の足を踏んでいました。三代目・嘉平と同じく、醤油事業そのものを終えることさえよぎっていました。
しかしながら、日本酒と醤油はどちらも日本人のスピリットに触れる、食の時を楽しむために欠かせないものです。切っても切り離せない両者。自問していた折に、二つの転機が訪れます。

 

醤油造りの新たな起点 – 廃園になった保育所との出会い

新醤油蔵2019年、醬油造りは新たな節目を迎えます。150年以上の歴史を重ねた旧醤油蔵の老朽化による建て壊しが決まり、新たな醤油造りの拠点を模索していた時に出会ったのが、町の遊休資産でした。同町内の山あいにある保育所は、少子化のため2010年3月に閉園し、その後の利活用が滞っていました。そこで、保育所を醤油蔵として活用することを町に提案したのです。

かくして新しい醤油蔵の舞台となるのは、かつて子どもたちが集った保育所です。職員室は製麹室に、給食室は大豆の蒸し場に、保育室には諸味(もろみ)タンクが並ぶ発酵室へと改装しました。一方で、園児たちが使っていた小さな下駄箱や黒板、「ひまわり組」と書かれた表札など、保育所の趣きを残すよう努めた部分もあります。このように能登の遊休資産を活用することは、数馬酒造が重きを置く「地域を活かした持続可能なものづくり」にも通じています。子どもたちの賑やかな声の代わりに、私たちが地域の新しい活気となれれば幸いです。

 

醤油造りへの後押し – 耕作放棄地で育てる大豆と小麦

醤油事業を続ける意義は、さらに高まります。その契機のひとつに、農家の課題がありました。現蔵元の高校時代の同窓生であり、酒米の契約栽培を行う農家「ゆめうらら」様とは能登の里山里海の景観を維持するために、2014年から耕作放棄地の開墾を始め、酒米を育てる「水田作りからの酒造り」に取り組んできました。これまでに水田へと蘇らせた耕作放棄地は東京ドーム6個分に及びます。
弊社社長と裏社長
開墾した水田の中には、水を引きにくい立地や、他の農家と水を分け合うには水資源が乏しい土地が出てきました。このような水稲の栽培に適さない土地は大豆や小麦の栽培が適していたのです。大豆と小麦は醤油の原材料そのもの。パートナー農家の裏さんが作る大豆と小麦が手に入るとは、最良の渡りに船でありました。同時に、醤油を醸すことが農家の課題解決の助け舟にもなったのです。

「水田作りからの酒造り」では、酒造りを通して地域の未来をより良くしていく大きな喜びと意義を感じました。そのような働きが醤油造りでも実現できるのは本望です。能登で酒を造ることは農業をはじめとする様々な地元産業を連携させます。これは醤油造りにも通じるものがあり、今回のように農家の課題をともに考え、解決に向けて取り組むことができるのは、日頃から密に連携をとっている賜物であると改めて感じさせられました。
こうした二つのきっかけに導かれるように、数馬酒造は能登の大豆と小麦を醸す「原点回帰の醤油」に着手することを決意します。

 

醤油造りに活かされる酒造りの技術

原材料の生産者が日本酒造りと同じなら、醤油を醸す造り手ももちろん同様です。醤油造りに携わるのは、冬の間、酒造りを行う醸造社員たちです。これまで日本酒造りにおいても生酛造りや、酵母を添加しない醸造など、日本酒の源流とも言える製法にも果敢に挑戦してきた醸造チームです。
醤油造りに携わる蔵人
新たな醤油は、日本酒造りで培われた技術を存分に活かしながら、原材料を微生物の力によって時間をかけて発酵させる、昔ながらの本醸造方式にこだわります。麹(こうじ)造りでは、吟醸仕込みに用いる箱麹法や蓋麹法を活用し、大豆そのものが持つ味わいをきれいに引き出しています。
また、使用する道具は設備投資によって日本酒造りでは使用しなくなった冷却器なども活用しています。醤油造りにおいても日本酒造りの経験が活かされ、またその逆も然り。醤油事業と日本酒事業を並行して進めることで、ものづくりの相乗効果も生まれています。
麹蓋
さらに醤油造りは、持続可能な働き方にも繋がります。酒造りの蔵人といえば、一般的に秋から春にかけて仕込みを行う季節労働制が主流でした。しかしながら弊社では、2015年から社員蔵人による酒造り体制に切り替え、通年雇用を取り入れています。酒造りが終わると、醤油造りへ、そしてリキュール造りへ。一年を通したそれぞれの醸造現場において効率よく力を発揮することが出来るのです。

 

さらに地域性を色濃く – 原材料へのこだわり

ふっくらと蒸し上がる大豆
醤油の原材料は大豆、小麦、塩、そして水。なかでも、ゆめうらら様が育ててくださる大豆は膨らみがあり、色つやが良く、粒揃い。吸水性が高く、ふっくらと蒸し上がり、甘くしっかりとしたコクがあります。また小麦は硬質で粒が大きく、力強さがあります。炒ると芳ばしい香りが広がり、小麦に含まれるデンプンが醤油に甘味と香りを生み出します。
高品質な酒米を毎年納入してくださる農家が醤油の原材料を育ててくださることは、造り手の私たちにとって大きな安心感があります。それは完成した醤油を手に取ってくださる皆様にとっても同じではないでしょうか。
ゆめうらら様の小麦
仕込み水には同町内にある能登海洋深層水施設で取水され、脱塩した海洋深層水を使用しています。この海洋深層は日本海固有水と呼ばれる日本海内で循環している深層水を約320mの深さから取水し、ミネラルバランスを損なわないよう非直火型低温製法でじっくりと脱塩されています。ミネラルが豊富な海洋深層水は麹菌や酵母菌などの微生物の働きを促進させ、醤油はなめらかさを増すといわれています。
海洋深層水を採用した背景には、数馬酒造の「地域資源の価値を最大化するものづくり」を目指す姿勢があります。酒造りにも数年前から海洋深層水を仕込み水に使用し、発酵の様子やミネラルを感じる味わいの仕上がりに十分な手応えを感じていました。海洋深層水は能登らしさを感じる味わいに仕上げるための大切な地域資源だと感じています。

さらに新たな地域資源に着目し、「かん水」仕込みの醤油にもチャレンジしています。かん水は、能登の揚げ浜式製塩の工程中にできる、塩になる手前の液体です。にがり成分を含み、ミネラルが豊富で塩味にまろやかさが生まれ、よりなめらかで香味のバランスがとれた醤油に仕上がるのではないかと期待しています。
かん水

 

醤油の完成 – 日本酒に寄り添う醤油

数馬酒造の醸す新しい醤油は毎年タンク1本分のみ搾る、こだわりの少量生産です。
2019年に最初の仕込みを終え、熟成期間を経て完成した醤油は2021年秋、ついに発売の時を迎えます。しぼり上がった醤油「竹葉 酒蔵が仕込んだ能登の里海醤油」は、海洋深層水由来の赤みがかった淡い色を帯び、香りは香ばしく、穀物の印象とともに柔らかい塩味とミネラルをしっかりと感じる上品な味わいです。
しぼりたての醤油
ふくらみのある香りと、まろやかな塩味は白身魚やイカ、エビ、貝類との相性が抜群で、ぜひ日本酒と一緒に味わっていただきたいです。

甘味料、着色料、保存料、酸味料、調味料は添加しておらず、一般的な「こいくちしょうゆ」に比べて食塩分を22%控えていますので、塩分が気になる方のご要望にもお応えできているかと思います。
日本酒とともに味わっていただきたい
醤油の販売を前に、ソムリエをはじめ地元能登の漁師やレストランを営むシェフに試作品をテイスティングしていただきましたので、コメントをご紹介いたします。

日本ソムリエ協会理事 辻様

透明感のある美しいトパーズ色のような輝きがあり、柔らかいアタックで塩味とミネラルがしっかりと感じられ、余韻も長く楽しめる。
また、この醤油の持つ爽やかさが『竹葉 生酛純米 奥能登』や『竹葉 いか純米』とよく合う。

定置網漁師 中田様

きれいな味と素材の甘味から、すっきりと感じられます。
塩味を感じるが強すぎず、後口のキレが良いので、すっきりとしたお酒にも合いそうですね。
白身魚やイカ、エビなど、淡泊な魚介と相性が良いと思います。

ラトリエ・ドゥ・ノトシェフ 池端様

コクがあり、味わいが良い。まさに「未来を見ている醤油」だと思います。
フレンチで活用する選択肢として醤油は充分ありえて、その際には風味が重要です。そうした意味でも、この醤油は香りも風味も素晴らしい。

villa della paceシェフ 平田様

香りや状態の良さから、品質の高さが分かる。雑味がなく繊細な味わいの能登のキノコや山菜と合わせても良いかもしれない。
またオリーブオイルとの相性が良く、醤油の余韻で終わらずにオリーブオイルの香りで終わる。食材との相乗というより、食材の風味を引き立てる味わいですね。

さらには、竹葉の頒布会「Fun Fan Chikuha!」会員の皆様に試作品をお届けしたところ、嬉しいお言葉を頂戴いたしましたのでご紹介いたします。

「色合いがライト。香りはむせかえるようなこともなく甘味と香ばしさ、美味しいお煎餅みたい。口当たりはさらりと塩っぽさを感じます。後からほんのりと旨味が膨らみます。」


「本当に美味しく、お醤油だけでお酒が進む」


「まあるくて、しっかり味を楽しめる醤油。塩辛さより旨味が強く感じられて美味しいぞ〜!」


「色は薄めで料理の色合いを阻害しないのに、味は非常に芳醇で、めちゃくちゃいい。」


「普段の醤油と全然違った。舐めてすぐに味が来るのではなく、深みのような、何かワンクッションある感じがして、旨みを感じる時間があった。これが白身のお刺身と合うんだ。販売されるようになったら絶対買う。」

 

進化し続ける「醸しのものづくり」

耕作放棄地を活用して実った能登産の大豆と小麦を使用し、海洋深層水を用いて醤油は能登でしか出せない、風土を感じさせる味わいです。そこに酒造りの技術を取り入れ、数馬酒造らしさのエッセンスが加わった唯一無二の醤油です。

日本酒が食材を活かし活かされるように、醤油も食材と合わせることで、より一層その魅力が引き出されます。醤油造りにおいても日本酒造りの経験が活かされ、またその逆も然り。素材を活かすものづくりの面白さを感じています。

数馬酒造の原点である醤油造りは進化し始めたばかりですが、こうして完成した醤油を世に送り出せる手応えと皆様からの好評の後押しに、この醤油が持つ可能性を実感し、わくわくと期待が膨らみます。食の時を豊かにする原点回帰の醤油「竹葉 酒蔵が仕込んだ能登の里海醤油」をお手に取っていただけましたら幸いです。

今後も皆様の食卓をより豊かに、食の時を楽しんでいただきたいという一心で、日本酒、リキュール、醤油と相乗しながら研鑽するものづくりを行ってまいります。どうぞご注目くださいませ。
食の時を豊かにするものづくり

 

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