醸しコラム

Column

【対談】新しい酒米に挑む。米農家と酒蔵に共通する想い

2020.12.07


2020年冬、石川県が11年もの歳月をかけて開発した、新たな酒造好適米「百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)」を使用した「竹葉 百万石乃白 大吟醸」をリリースしました。

本インタビューでは、2018年から能登で最も早く「百万石乃白」の試験栽培を行っている契約農家「株式会社ゆめうらら」代表の裏貴大(うらたかひろ)社長とともに、百万石乃白への想いを、弊社社長数馬嘉一郎が紐解きます。
 

高品質は当たり前、 相手の顔が見える責任感

数馬:いつも質の良いお米を作ってくださり、ありがとうございます。今回の「百万石乃白」の試験醸造を能登で唯一先駆けて着手できたのは、裏社長のおかげと私は思っています。御社にとっても、「百万石乃白」の試験栽培は、能登で最初となったわけですが、お声がけいただいた時はどのような感想をもたれましたか?

裏社長:県の農業試験場からこのお話をいただいた時は、素直に嬉しかったです。石川県オリジナルの酒米「石川門」が開発されてから時間が経っていたので、石川県全域で作れるポスト山田錦になりうる大吟醸向けのお米が開発さることは素晴らしく、酒米品種が増えることに感謝しています。
また、県内にはトップクラスの米農家さんがたくさんいらっしゃるなかで、‟能登×酒米=ゆめうらら“として業界内で認知されていると実感できたことも、とても嬉しく感じました。

数馬:ゆめうららさんの社風としてチャレンジングがあるので、そういった意味でも声をかけ易かったのかもしれません。能登で若い農家ということからも、起爆剤として期待されているのかもしれませんね。
今年で試験栽培開始から三年が経ちました。三年目の手ごたえとしては、何か感じるものはありましたか?


裏社長:初年度から手ごたえを感じています(笑)
農業試験場で、11年の月日をかけて研究されてきた品種なので、信頼しています。指導員の方も手厚く指導してくださり、惜しみなく知識を教えていただきました。あとは自分たちが最善を尽くすのみ。自分たちの育てたお米で、御社がお酒を造るということが分かっているので、品質の良いお米を提供したいと責任感が生まれます。

数馬:相手の顔が見えると、気持ちが引き締まりますよね。お米の味にも、気持ちが出ていると思います。なので私たちも、“自分たちが作りたい”“チャレンジしたい”農家さんと一緒に取り組みたいと思っています。いつもありがとうございます!

ゆめうららさんから常に高品質なお米を納入いただいているので、感覚が麻痺してしまうのですが、「百万石乃白」は品質や栽培が安定しにくいと伺っています。けれど、昨年は石川県で唯一、全量一等級でしたよね。どう感じましたか?

裏社長:そうですね…正直悔しい。私たちが目指す酒米はオール特上なんです。食用米は一等級が最高格付で、酒米だけにその上のランクがある。ならば、オール特上にして市場に出したいという気持ちがあります。なので、来期はどう取り組もうかと次のことばかり考えています。嬉しいといったプラスの感情は、特上が当たり前の段階になってから芽生えるんだと思います。

数馬:その志の高さに、嬉しさと頼もしさを感じます!品種や栽培環境も大事ですが、やはり“誰が作ったお米なのか”、どういう姿勢で取り組んでいるかが大事と考えています。ゆめうららさんがパートナー農家さんであることを誇りに思います。

数馬:本日、「竹葉 百万石乃白 大吟醸」をお持ちしたのですが、裏さんに飲んでいただくのは緊張します(笑)お味はかがでしょうか?

裏社長:んまい…!

数馬:え、感想それだけ?!(笑)

裏社長:「百万石乃白」は、すっきりとした味わいで、フルーティな香りの日本酒になりやすいと聞いていますが、本当に華やかな香りですね。すいすい飲み進めたくなる味です。

数馬:ありがとうございます。弊社ではすぐに市場に出すのではなく、一定の熟成期間を設けて、味に深みを持たせています。先だって試験醸造に着手できたため、仕込み方法の試行や熟成の経過観測などを行うことができました。そうしたこともあり、他の酒蔵さんと比べると、少し時期が遅れての販売となりました。

裏社長:いつ発売されるのだろうかと思っていましたよ!

数馬:お待たせして申し訳ありません(笑)

※後日、裏社長のご厚意により、地元志賀町仏木(ほとぎり)青年団の方々にも試飲していただき、感想を頂戴しましたのでご紹介いたします。

  • 飲みやすく、若い世代に日本酒を勧める時に良いかも。刺身とバツグンに合いますね。

  • これまで日本酒に苦手意識を持っていましたが、日本酒独特の香りが感じられず、おいしく飲めました。

  • 自らが育てたお米で造られた日本酒を、仲間たちと飲むことができて感無量。スッキリとした味わいでおいしく、無限に飲めますね。

  • このお酒は祭りにぴったりだと思う。これまでは能登純米でしたが、このお酒に替えても良いかも!個人的には生ハムやチーズとも合わせてみたい。

  • どれだけでも飲める。ゴクゴクと飲める日本酒に出会えてびっくりしました。

  • 口に入れた瞬間は日本らしさが感じられず驚きましたが、後から日本酒の味わいがしっかりと感じられ、とても素敵です。いろんな食材と合わせたくなりました。

  • 私はお酒が得意ではないのですが、このお酒なら少しずつですが飲めます。日本酒への苦手意識が変わりました!一人で飲むより、みんなで飲む方が、このお酒のおいしさをより感じられますね。

 

未来に向けて、共通する使命


数馬:冬季に入り、稲作としては一区切りついた頃と思います。今期のトピックとして、新たな取り組みはありますか?

裏社長:肥料の試験開発ですね。気象データや土壌データを分析し、地域にコミットした肥料で酒米を栽培したいと考えていたところ、JAさんのご協力もあって、酒米の品種や、田んぼによって最適な肥料を試験開発していいただきました。数馬酒造専用肥料といったところでしょうか(笑) 肥料といっても、水田環境やお米に影響を与える農薬はすべて不検出です。安心安全を担保しながら、無理無駄ムラを減らして、品質や収量の向上を目指します。御社とともに事業を加速させていけたらと思っていますので、よろしくお願いしますね。

数馬:数馬酒造専用肥料…ありがとうございます。私たちもご期待に添えるよう尽力します。御社のスピード感には本当に驚かされます。

裏社長:私は農業こそ、技術革新を積極的に取り入れていかねばならないと思っています。特にお米は廉価に取引されるので、無人化できるところは無人化し、コストを抑えたいと。
また、無人化によって生まれた時間を有効に使い、得られた知識や技術をゆくゆくは他の農家さんにも還元して、質の高い農家さんを増やしたいと考えています。それが地域全体の底上げに繋がる思うんです。

数馬:まさに能登全体の未来を見すえて、ということですね。


裏社長:農業にイノベーションを起こし、水田の価値を高め、将来へつなげることが私たちの使命だと思っています。“土をつくることが自分たちの仕事”、そのためには何をすべきかを常に模索しています。

数馬:私たちも「能登を醸す」を経営理念として掲げ、地域を活かした持続可能なものづくりに取り組み、挑戦し続けていきます。そして、その結果として能登のことを好きになってくれる人がひとりでも増えたらと思っています。
裏さん、これらもよろしくお願いいたしますね!

 
――― 農業による土づくりと、弊社による醸しのものづくり。
両者に共通するのは、能登を想う気持ちであり、互いの生業で能登の魅力を高めてゆこうとする姿勢です。ゆめうらら様とは今後も連携し合い、皆様に能登の風土を感じるおいしさをお届けしてまいります。

 

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