数馬酒造は2025年より石川県の「いしかわCFP(カーボンフットプリント)算定モデル構築事業」に参加しています。
この事業は石川県内企業のCFP自主算定能力を高めるために発足し、脱炭素活動を通じて付加価値向上と競争力強化を図ることを目的としています。
この事業に参加するにあたり、2014年より「水田作りからの酒造り」を共に実現させてきたパートナー農家・株式会社ゆめうらら様(志賀町)と連携してCFP算定の取り組みを進めました。
CFPとは?数馬酒造が取り組む意義
CFP(カーボンフットプリント)とは、Carbon Footprint of a Productの略称であり、製品やサービスごとの温室効果ガス排出量を指します。原材料の調達から製造、流通、廃棄に至るまでの、商品のライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの量を二酸化炭素に換算して見える化する仕組みです。
数馬酒造におけるCFP算出への取り組みは、単に昨今の脱炭素化への流れに乗ったというものではありません。2017年からSDGs目標の一つとして掲げる「環境負荷に考慮し、社会に貢献するものづくりを行う」という目標の実現のためにも必然でした。
また、もう一つの目標である「地域資源を最大限に活用した持続可能な原材料調達100%を実現する」では、2020年に全量能登産米の酒造りを達成させています。これにより「能登で原料調達を行い、能登で製造する」というサイクルが整い、輸送マイレージの削減につながっています。
そして、能登半島地震を受けてのCFP算出による自社ブランド強化は、能登全体の企業価値を牽引することにも役立つという思いから、CFP算出の取り組みは大いに意義があると考えました。
CFP算出を可能にした、能登の契約農家と培ってきた関係性
食品業界では原材料の生産から廃棄に至るまで、多岐にわたるサプライチェーンが関わってきます。ひとつひとつの工程を分析する必要があるため、CFP算出は簡単なことではありません。今回の石川県のモデル事業においても、2026年3月時点における食品業界からの参加は数馬酒造のみでした。
加えて酒造りの工程は一層複雑です。では、なぜ数馬酒造がスムーズにCFP算出を行えたのか。それには明確な理由があります。
結論から申し上げますと、原料のトレーサビリティ(追跡可能性)が完全に確立されているためです。数馬酒造では酒造りに使用する原料米をすべて「能登産の契約栽培」に限っています。そして、商品設計では「一商品単一農家」の原則を大切にしてきました。「このお酒は、どの農家さんのお米を使用しているか」が明確なのです。ゆえに詳細なCFP算出が可能となりました。
また、農業におけるCFP算出は天候や土壌環境など自然相手の複雑さがあるため、製造業以上に大変な作業であることは容易に想像できます。それにも関わらず、契約農家さんが快く協力してくださったのは、「水田作りからの酒造り」に共に取り組み、信頼関係を築いてきたからこそと、大変有難く感じています。
年間約14,000本分のスギの吸収量に相当する環境負荷が低減
今回のCFP算出では2026年現在の数値と、現社長が事業承継した2011年の数値を比較し、お酒1リットルあたりのCFP算出値に大きな改善が見られました。その改善幅は予想をはるかに上回り、単純計算すると年間生産量あたりでスギの木約14,000本が一年間で吸収する二酸化炭素量に相当すると考えられます。
(参考)林野庁ホームページ「森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/20141113_topics2_2.html
製品品質や働き方向上のための設備投資を積極的に行いながら、電力の再生可能エネルギーへの切り替えや原料米の100%能登産化による輸送マイレージの削減など、地道な設備投資と環境対策がCFP算出値の改善につながったといえます。
2026年3月に開催された「いしかわ産業 CFP算定ガイドライン活用キックオフセミナー」では発表の機会を頂き、ゆめうらら様とともに参加してきました。これまでに築き上げた能登の農家さんとの連携体制が、環境に配慮した酒造りとしての意義の側面でも高く評価されることに、大きな手応えを感じました。

自然の恵みを活かした生業である酒造りにおいて、持続可能性や環境配慮の活動は今や切っても切り離せない必要条件となっています。脱炭素社会が謳われる現代に生まれた新しい指標がCFPです。そのものさしに私たちの活動をあててみた時に、これほどにも大きな成果が見えたことは素直な喜びです。能登の原材料で能登の魅力を高める商品を作りたいという思いが、現代的価値の側面からも実りを得たと言えます。
数馬酒造はこれからも、能登の美しい自然と共生し、心豊かな時間を醸す企業として挑戦してまいります。
